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安倍政権が新潟県知事選で擁立する花角英世氏に「原発再稼働問題をよく知らない」疑惑が浮上

  • 政治
2018.05.17
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新潟県知事選への出馬を表明、会見を行った花角氏

世界最大級の東京電力柏崎刈羽原発の再稼動を左右する、新潟県知事選が6月10日に行われる。この知事選、与野党激突の決戦となると同時に「県民党争奪戦」の様相も呈している。

「候補擁立難航」「出遅れ必至」との予測に反して野党陣営は、5月8日に柏崎選出の池田千賀子県議が電撃的に出馬表明。与党陣営がキャッチフレーズにしようとしていた「県民党」を先取りして「本家県民党」を名乗り始め、「総理官邸のご意向に逆らわない“優秀な官僚”では原発再稼動が進む恐れがある」として、与党側を“エセ県民党”と批判したのだ。

◆新潟県民有志の出馬要請に、花角氏が立ち上がったということになっているが……。

“エセ県民党”と批判されたのは、佐渡出身の国交官僚の花角英世・海上保安庁次長。二階俊博・自民党幹事長が運輸大臣だった時の秘書官だった。

「二階幹事長は『政界寝業師』との異名を持つ、百戦錬磨の政治家。花角氏擁立を最初から予定していた二階幹事長のシナリオに沿って、『県民党を名乗れる、政党色のない候補を擁立する』という自民党新潟県連の方針が決まったようにみえます」と新潟県政ウォッチャーは語る。

「政治色を感じさせない急造団体『新しい新潟を考える会』が設立され、自公県議がそれに参加。そこから“花角氏待望論”の声が出て、5月9日には県民有志8名が出馬要請をして11日に花角氏がOKするという経過をたどりました。この県民有志には政治家はおらず、民間人ばかり。しかしその人選は、与党側が事前にすりあわせていたといわれています。県民から自発的に動いているように装っていますが、すべては“二階シナリオ”通りだったのです」

県民有志の代表は、花角氏の中学高校の同級生でもある、新潟市の医療法人「新成医会」の渡辺毅理事長(医師)。1日の「新しい新潟を考える会」の会合に参加して自民党の友好団体の商工会議所幹部らと意見交換、「花角氏はマネジメント能力もあり、知事としてふさわしい」とコメントした。

そして、渡辺氏を代表とする県民有志8名(運輸・観光・食品業界の会社社長が4名、ビル関連会社の専務取締役1名ら企業経営者が5名。他にカリスマバスガイドやイベント関係者など)が上京し、台東区上野の新潟県人会館で花角氏にラブコールを送った。

この出馬要請に対して花角氏は「冥利に尽きる」「断るのが難しくなった」「里心が出た」と前向きに受け止めて出馬を決意。14日に辞表を提出、15日に新潟市で出馬表明を行った。その15日の出馬会見で、記者は花角氏を直撃した。

◆花角氏に「官邸に異議申し立てできるかどうか」を聞いてみた

――米山前知事も泉田元知事も原発事故時の原子力防災に欠陥があると言っていました。両氏ともに「ずさんな避難計画のもと、原子力規制委員会のお墨つきで再稼動するのはおかしい」などと問題提起をして当選し、「再稼働を判断するのは、福島原発事故の三つの検証が終わってから」という立場でした。現時点での原発再稼働に対する認識はいかがですか。

花角:泉田知事時代、私は直接の(原発)担当ではありませんでした。横で聞くだけでしたけれども、避難計画の実効性について疑問を呈していたのはよく覚えています。そういう意味では「そうだよね」と思うところがありましたので、「三つの検証」の中の一つとして避難計画というのは非常に重要だと思っています。

――花角さんが現役の官僚時代、泉田裕彦元知事が「原発事故時の住民避難用バスの運転手確保」に関する疑問提示をしたと思います。これは国交省マターだったとも思うのですが、これについて何か発信、問題提起をなさったことはありますか?

花角:私自身は担当ではありませんでした。

――相手陣営からは「優秀な霞ヶ関官僚ほど、総理官邸の(原発再稼働を進めるという)ご意向に逆らえないのではないか」との指摘が出ています。現役の官僚時代、政権に異議申し立てをした事例があれば、教えていただけますでしょうか。

花角:私が交渉するとか、そういうことはありません。

◆花角氏は「県民の要請」ではなく「二階幹事長のシナリオ」で出馬した!?

――「県民党」として県民の要望から出馬を決めたということになっています。実際は、安倍政権にとって、二階さんにとっては最初から意中の候補だったのではないでしょうか。花角さんにしても二階さんの大臣時代に仕えて高く評価されていたので、「きっと県知事選に出たら応援してくれるのではないか」と期待する、阿吽の呼吸のようなものがあったのではないでしょうか?

花角:運輸大臣時代の大臣秘書官をしていまして、仕事のやり方とか立ち振る舞いとかも含めてご指導をいただきました。感謝している方であるのは事実ですが、今回の選挙で、幹事長から私に直接「ああしろ」「こうしろ」と言われたことは一度もありません。

――最後に二階幹事長とお話をしたのはいつ頃ですか。

花角:この2、3日のうちにお電話でお話をさせていただいております。

――どういうお話をされたのですか。

花角:私が「県知事選をやることになった」ということをお話しました。

――その電話の前は、何かあったのですか。

花角:この選挙と全然関係がないことでも、しょっちゅういろいろなお電話がありますので、その意味では親しくおつき合いさせていただき、お世話になっています。

――選挙で陣頭指揮を取る二階さんと太いパイプがあれば、「選挙になれば、応援してくれるのではないか」という期待感は当然あったのですか。

花角:期待感は正直ないです。ただ私は二階幹事長に「ご報告をするべきだ」と思って、ご報告をしました。

◆花角氏、原発問題に対する知識の浅さを露呈

まさに安倍政権が期待する“二階シナリオ”通りの展開になった形だが、問題は「総理官邸のご意向に従う官僚なのか否か」「自民党や官邸の言いなりになるのか否か」ということだ。いくら選挙前に「安全性が確認できなければ原発再稼働すべきではない」と言っていても、原発の安全性確認について、知事に確固たる基準や認識がなければ「国が安全と言っているから再稼働容認」となってしまう可能性が高い。

しかし、花角氏の原発再稼働に関する認識はたいへん薄いと言わざるをえない。それは出馬前のコメントにも現れていた。5月9日の出馬要請を受けた後、地下鉄の改札口に向かう花角氏を記者団が追いかけるぶら下がり取材となり、記者が原発再稼動に対する考え方について質問したときのことだ。

――1年半前の県知事選で米山氏は「(原発事故時の住民避難用)バスの運転手が確保できないので避難計画は不十分。再稼動すべきではない」と訴えて当選していました。それと同じ考えでしょうか?

花角:(米山県政下の)検証委員会をしっかりやるべきだと思います。検証をやっていないのに、再稼動ができるわけがないじゃないですか。

記者の質問にストレートに答えず、検証委員会の継続しか口にしない花角氏。そこで「米山知事は『(原発事故時の住民)避難用バスの運転手が確保できないので再稼動反対だ』と選挙中に訴えていましたが」と再質問をすると、驚くべき回答が返ってきた。

「その事実関係を知りません。検証が終わらない限り、(再稼動は)認められないですよね」

これは「原発問題に対する基礎的知識の欠如」としか言いようがない。新潟県知事選候補と実名報道されてから2週間以上経っているというのに、花角氏は前回の県知事選での米山氏の主張すら把握していなかったのだ。

しかも「原発事故時の住民避難用バスの運転手確保が不足」「避難計画は不十分」との指摘は、米山前知事が「県政継承」を掲げた泉田裕彦・元県知事が訴えていたことでもあった。そして泉田氏が去年秋に総選挙に出馬表明した際にも、「原子力防災(原発事故時対応)の欠陥」が放置されていることを政界入りの理由に挙げていたにもかかわらず、泉田県政の副知事をつとめた花角氏は「その事実関係を知りません」という。

原発再稼動に邁進する安倍政権は原子力防災の欠陥を無視して、何とか再稼働にこぎつけようとしている。泉田元知事と米山前知事の二代にわたって問題提起してきた内容を知ることなく、花角氏は一つ覚えのように「検証委員会」と繰り返す程度の知識で新潟県知事選に出馬を決めたといえるのだ。

<取材・文・撮影/横田一>
ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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