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高度プロフェッショナル制度で私たちは残業代なしで「働かされ放題」になる

  • 政治
2018.05.17
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「働き方改革」関連法案が、野党6党が欠席のまま衆議院本会議で審議入りしました。一時は国会が「空回し」のまま行われるのではないかと懸念されましたが、5月8日にようやく野党も審議に復帰し、本格的に論戦が始まりそうです。

ちなみに、「空回し」とは野党からの質疑を受けないまま時間を経過させる方法のことで、パチスロなどでストップボタンを押さずに自動的に勝負がつく打ち方からきています。政治的には実質的な審議がないも同然で、「邪道」といわれています。これを断行しようとした与党に対し、野党もやっと審議参加を決め、まともに話し合いが行われる見込みとなったことは歓迎すべきでしょう。

「働き方改革」では、当初は「裁量労働制」と「高度プロフェッショナル制度」という大きな2本柱がありました。

しかし、「裁量労働制」については厚生労働省によるデータの捏造が発覚し、法律としての土台が崩れてしまっただけでなく、東京労働局が取り締まりのモデルケースとしてアピールしていた野村不動産が、実は「裁量労働制」で過労による自殺者を出していたことが発覚。これを追及したマスコミに対して、勝田智明元局長が恫喝とも取れる逆ギレ発言をしたことで国会が紛糾し、政府は法案から「裁量労働制」の記載を削除せざるを得なくなりました。

「裁量労働制」は消えたものの、今国会での審議では、もうひとつの「高度プロフェッショナル制度」が残っています。では、この「高度プロフェッショナル制度」は、私たちの働き方をより良くしてくれるものなのでしょうか。

●年収1075万円未満でも「働かせ放題」に?

「高度プロフェッショナル制度」というのは、高度な専門性を持つ専門家を時間で縛らずに成果主義で働けるようにする制度です。政府によれば、対象は年収1075万円以上の金融ディーラーやコンサルタントなど専門知識を持った人に限られます。こうした人たちに対して、労働時間の規制を外し、休日や深夜の時間外労働の残業代をなくし、自由な働き方ができるようにするための制度だと説明しています。

こう聞くと、「年収1075万円以上で、しかも限られた専門職が対象なら、私には関係ない」と思う方も多いかもしれません。しかし、それは大間違いです。なぜなら、法案には「年収1075万円以上」とは明記されていないからです。

政府の法案に書かれているのは、「労働契約により見込まれる賃金の額を1年あたりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること」という内容です(第四十一条の二の二のロ)。

この「3倍の額」というのは何かといえば、厚生労働省が毎月行っている「毎月勤労統計調査」の「決まって支給する給与」の「3倍の額」のことです。2018年3月時点の速報値では、この「毎月決まって支給する給料」は月平均で26万4233円でした。つまり、この「3倍の額」の月79万2699円が、現時点では対象になります。これを12倍して年換算すると、年収951万円になります。

そうなると、政府が説明する「年間1075万円」との間には124万円の差が出ますが、これは後半の「相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額」、つまり厚生労働省が独自に上乗せできる額にあたります。そのため、厚生労働省の審議会などで「124万円も上乗せすることはない、1円でいいよ」ということになれば、対象者の年収は1075万円以上ではなく951万円以上ということになります。

しかも、前半にあるように「労働契約により見込まれる賃金の額を1年あたりの賃金の額に換算した額」なので、実際に支払った額が年間1075万円以上の人が対象ではないのです。たとえば、ものすごく忙しくて人手が足りないので、1カ月だけ月90万円で人を雇い、朝から晩まで休みなく働かせたとしましょう。それでも、月90万円を12倍して年換算することで「高度プロフェッショナル制度」の対象となるのです。

さらに、これは実際に90万円を受け取った人が対象ではなく、「90万円を支払う」という契約をした人が対象になるため、事業所のなかには「契約をしたのに支払わない」というところも出てくる可能性があります。しかし、こうした事業所をすべて取り締まるのは不可能という悲しい現実があります。

それは、取り締まる厚生労働省労働局の労働基準監督官の数を見ても明らかです。また、「高度プロフェッショナル制度」はほかにもさまざまな問題を抱えています。それらについては、次回に詳述したいと思います。
(文=荻原博子/経済ジャーナリスト)

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